2021-05-29
29~34番目の詩でアルジュナの嘆き悲しみ[ショーカ]を私達は見ます。
कृपया परयाविष्टो विषीदन्निदमब्रवीत्।
अर्जुन उवाच।
दृष्ट्वेमं स्वजनं कृष्ण युयुत्सुं समुपस्थितम्॥२८॥
深い思いやりの気持ちにのみこまれ、悲痛の思いに堪えず
アルジュナは言いました。
クリシュナよ、戦闘配置につき、血縁の人々が敵意を燃やすのを見ると(28)
सीदन्ति मम गात्राणि मुखं च परिशुष्यति।
वेपथुश्च शरीरे मे रोमहर्षश्च जायते॥२९॥
手足は力を失い、口はカラカラに渇き
体が震え、髪の毛は逆立ち(29)
गाण्डीवं स्रंसते हस्तात् त्वक् चैव परिदह्यते।
न च शक्नोम्यवस्थातुं भ्रमतीव च मे मनः॥३०॥
弓[ガーンディーヴァ]は手から滑り落ち、皮膚は燃え
立つことが出来ず、考えは完全に混乱しています。(30)
निमित्तानि च पश्यामि विपरीतानि केशव।
न च श्रेयोऽनुपश्यामि हत्वा स्वजनमाहवे॥३१॥
ケーシャヴァよ、この戦いで身内を殺すことで、不吉な前兆を見ますし
何1つ良い兆しを見ません。(31)
न काङ्क्षे विजयं कृष्ण न च राज्यं सुखानि च।
किं नो राज्येन गोविन्द किं भोगैर्जीवितेन वा॥३२॥
クリシュナよ、私は勝利も王国も、快適な暮らしなど欲しくはない。
ゴーヴィンダよ、王国によっていったい何の益があり
生きることでどんな満足があるというのか?(32)
येषामर्थे काङ्क्षितं नो राज्यं भोगाः सुखानि च।
त इमेऽवस्थिता युद्धे प्राणांस्त्यक्त्वा धनानि च॥३३॥
これらの人々の為に、王権と領土、喜び、希望を望んでいるのに
その同じ人々が、命も富も捨ててこの戦いに集まっている(33)
आचार्याः पितरः पुत्रास्तथैव च पितामहाः।
मातुलाः श्वशुराः पौत्राः श्यालाः सम्बन्धिनस्तथा॥३४॥
師匠、父方の叔父さん、息子、お爺さん
母方の叔父さん、義理の父、孫、義理の兄弟、他の親戚縁者、友人(34)
35~47番目の詩でアルジュナの妄想[モーハ]を私達は見ます。
एतान्न हन्तुमिच्छामि घ्नतोऽपि मधुसूदन।
अपि त्रैलोक्यराज्यस्य हेतोः किं नु महीकृते॥३५॥
マドゥスーダナ(妖怪マドゥを滅ぼした者)よ、例え彼らが私を殺そうとも、私は彼らを殺したくない。
三界の王者の目的であっても、ましてや、この地上の王国の為に(35)
निहत्य धार्तराष्ट्रान्नः का प्रीतिः स्याज्जनार्दन।
पापमेवाश्रयेदस्मान् हत्वैतानाततायिनः॥३६॥
道を外れた者を折檻する者、クリシュナよ。ダルタラーシュタラの息子を滅ぼし、どんな満足を得るというのか?
悪事を働く者を破壊し、私達にはただパーパが引き起こされる。(36)
तस्मान्नार्हा वयं हन्तुं धार्तराष्ट्रान् स्वबान्धवान्।
स्वजनं हि कथं हत्वा सुखिनः स्याम माधव॥३७॥
故に私達は、ドゥルタラーシュタラの息子、つまり身内を殺す資格はない。
クリシュナよ、実際身内を殺し、どの様に幸せになれるというのか?(37)
यद्यप्येते न पश्यन्ति लोभोपहतचेतसः।
कुलक्षयकृतं दोषं मित्राद्रोहे च पातकम्॥३८॥
貪欲によって、考えが破壊されてしまった人々は
身内を破壊し、友人を裏切ることでの罪を理解しない。(38)
कथं न ज्ञेयमस्माभिः पापादस्मान्निवर्तितुम्।
कुलक्षयकृतं दोषं प्रपश्यद्भिर्जनार्दन॥३९॥
しかしクリシュナ、この罪から身を引く為に、つまり一族の破壊から生まれる罪を
はっきりと理解する私達が、どうして、それを考慮せずにいられるでしょうか?(39)
कुलक्षये प्रणश्यन्ति कुलधर्माः सनातनाः ।
धर्मे नष्टे कुलं कृत्स्नम् अधर्मोऽभिभवत्युत ॥४०॥
一族が破壊される時、先祖代々続いてきたダルマは死に絶える。
ダルマが失われた時、アダルマが家系全体を支配するのではないでしょうか?(40)
अधर्माभिभवात् कृष्ण प्रदुष्यन्ति कुलस्त्रियः।
स्त्रीषु दुष्टासु वार्ष्णेय जायते वर्णसङ्करः॥४१॥
クリシュナよ、アダルマの増長により、一族の女性たちは、相応しくない道に陥ります。
ヴァールシュネーヤよ、女性たちが堕落したらヴァルナの混乱が生まれます。(41)
相応しくない道に陥る[प्रदुष्यन्ति]家族で守ってきたことが守られなくなる
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सङ्करो नरकायैव कुलघ्नानां कुलस्य च।
पतन्ति पितरो ह्येषां लुप्तपिण्डोदकक्रियाः॥४२॥
混乱はまさに、家族と家族の破壊者を地獄だけに導きます。
先祖は供養(水、お団子を捧げる)の儀式を受けられず確かに地獄に落ちるでしょう。(42)
दोषैरेतैः कुलघ्नानां वर्णसङ्करकारकैः ।
उत्साद्यन्ते जातिधर्माः कुलधर्माश्च शाश्वताः ॥४३॥
家族の伝統を壊す者の悪行、ヴァルナダルマに混乱を作り出すことで
絶え間なく続いてきた社会のグループ、家族に維持されてきたダルマは破壊されます。(43)
・ブラーフマナ
・クシャットリヤ
・ヴァイシャ
・シュードラ
・ブランマチャーリャ(学生期)
・グラハスタ(家族人としての生き方)
・ヴァナプラスタ(隠居生活の準備)
・サンニャーサ(人生のゴールを果たすための生き方)
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ヴェーダの文化では、宇宙から与えられた義務を果たすことにより、精神的に成長することが目的でした。
どの職に就いているかではなく、社会に貢献できているか、精神的に成長できているか、が重要でした。
職業や結婚は、基本的には同じヴァルナの中で決まる、というのが原則ですが、時にはイレギュラーもあり、イレギュラーな例はマハーバーラタでも多々見受けられます。
自分に与えられた義務[スヴァ・ダルマस्वधर्म]を果たすことで、社会全体が機能し「お互い様」で成り立っていました。
義務を放棄し、他の仕事に就くことは、他人のするべき仕事[パラ・ダルマपरधर्म]を奪うことになるので、推奨されず、個人や全体の不安や恐怖を招くもの[भय-आवह]と教えられています。
उत्सन्नकुलधर्माणां मनुष्यानां जनार्दन।
नरके नियतं वासो भवतीत्यनुशुश्रुम॥४४॥
ジャナールダナ(クリシュナ)よ。家系のダルマを破壊した者たちは
例外なく地獄での暮らしがあると私たちは聞きました(44)
अहो बत महत्पापं कर्तुं व्यवसिता वयम् ।
यद्राज्यसुखलोभेन हन्तुं स्वजनमुद्यताः ॥४५॥
ああ、何てことだ!身内を滅ぼす準備が整った。
王国と栄華を浴するあまり、大きな罪を犯そうと決めている(45)
[अहो बत]ああ何てことだ!
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यदि मामप्रतीकारमशस्त्रं शस्त्रपाणयः ।
धार्तराष्ट्रा रणे हन्युस्तन्मे क्षेमतरं भवेत् ॥४६॥
武器を外し抵抗せずにいる私を
ダルタラーシュタラの息子達が武器を手にし、殺すなら、それは私にとってむしろ良いことだ(46)
सञ्जयः उवाच ।
एवमुक्त्वार्जुनः सङ्ख्ये रथोपस्थ उपाविशत् ।
विसृज्य सशरं चापं शोकसंविग्नमानसः ॥४७॥
サンジャヤが言いました。
戦場の真只中で、アルジュナはこの様に言い、弓も矢もその場に置き
心は悲しみに打ちひしがれ馬車に坐りこみました(47)
アルジュナは、自分が執着[ラーガ]、悲しみ[ショーカ]、そして妄想[モーハ] の深い海に居ることを理解し、⼼底この問題から逃れたいと思い、それには戦いを辞める事だと思いました。
しかし、これに納得しない考えも⽚隅にありました。
同時にアルジュナはこの問題が、自分自身で解決するには、深すぎることに気づかず、クリシュナに明け渡すこともしませんでした。
ジレンマに捉えられ、アルジュナは悲しみに打ちひしがれて⾺車に座り込みました。
ओं तत् सद् इति श्रीमद्भगवद्गीतासूपनिषत्सु ब्रह्मविद्यायां योगशास्त्रे श्रीकृष्णार्जुनसंवादेऽर्जुनविषादयोगो नाम प्रथमोऽध्यायः ॥
こうして、クリシュナとアルジュナの対話、ウパニシャッドと同等である、ブランマンの知識
それを得る手段の教え[ヨーガシャーストラ]、バガヴァッドギーターの「アルジュナの悲しみ」第1章が終わります。