
ये त्वेतदभ्यसूयन्तो नानुतिष्ठन्ति मे मतम् ।
ye tvetadabhyasūyanto nānutiṣṭhanti me matam |
सर्वज्ञानविमूढांस्तान् विद्धि नष्टानचेतसः ॥३.३२॥
sarvajñānavimūḍhāṃstān viddhi naṣṭānacetasaḥ ||3.32||
ところが、理由なしに批判し、私の教えに従わない人々は、全ての領域の知識に勘違いしている人たちであり、(自分自身を)失ってしまうほど識別を欠いている人たちだと知りなさい。
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クリシュナは、自身の教え[matam]に対して、疑念[asūyā]を抱かずに信頼[śraddhā]を持って従う人々は、たとえカルマ・ヨーギーであってもサンニャーシーと同様に自由[mokṣa]を得られると説きます。
モークシャへの道はこの2つのライフスタイル[niṣṭhā]に限定されており、第3の道はありません。
一方で、接続詞「ところが[tu]」を用いて、このイーシュワラの教えに従わない人々との対比が示されます。
教えに従わない[na anutiṣṭhanti]人々は、自身の知性[viveka]や自由意志を用いず、単に個人的な好き嫌い[rāga-dveṣa]や衝動に突き動かされて行動します。
これは、本能のみで生きる動物と同じ状態であり、人間が本来持つ「立ち止まって判断する知性[buddhi]」を放棄し、輪廻[saṃsāra]の中に留まることを意味します。
◎人生を生きている事は識別を意味する
人間として生きるためには、識別[viveka]と知性[buddhi]を働かせることが不可欠です。
しかし、教えに欠陥を見つけようとする人々[abhyasūyantaḥ]は、自らの生き方を正当化するためにクリシュナの教え[mata]を非難し、従おうとしません。
このような人々を、あらゆる知識において混乱している者たち[sarva-jñāna-vimūḍhāḥ]であると理解しなさい[tān viddhi]と、クリシュナは述べています。
彼らは、家族、社会、国家、そして自分たちを生かしている諸々の力[devatā]に対する義務を完全に誤解、あるいは無視しています。
他者や社会が自分に奉仕すべきだと考える自己中心的な姿勢を持ち、自らの好き嫌い[rāga-dveṣa]を満たすことだけに執着しています。
その結果、ダルマとアダルマ、アートマーとアナートマー、さらには人生の目的[dharma, artha, kāma, mokṣa]や食事のような日常の基礎に至るまで、あらゆるレベルで混乱[vimūḍha]に陥っているのです。
◎どのような理解も識別を必要とする
人間を人間たらしめる要素は、識別判断の能力である知性[buddhi]にあります。
クリシュナは、この能力を持ちながら使おうとしない人々を「識別力を欠いた者[a-cetasaḥ]」と呼び、彼らがあらゆる知識において混乱している理由を言います。
このような人々は、目先の利益(お金や権力)を得たとしても、調和[śānti]や幸せを失っているという点で、真に「失われた人[naṣṭa]」です。
成熟した識別を持つ人[vivekī]は、ある行為によって得られるものと、失われるものの大きさを常に天秤にかけ、不利益な取引を避けることができます。
また、怒り[krodha]などの強い感情に支配されると、過去の智慧や記憶[smṛti]が働かなくなり、知性の喪失[buddhi-nāśa]が起こります。
その結果、なすべきこととなすべきでないことの識別ができなくなり、人は破滅[praṇaśyati]へと向かいます。
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ध्यायतो विषयान्पुंसः सङ्गस्तेषूपजायते ।सङ्गात् सञ्जायते कामः कामात् क्रोधोऽभिजायते ॥
対象物を思う人に、それに関する愛着が生まれ、執着から欲求が生まれ、欲求から怒りが生まれます。[2-62]
क्रोधात् भवति सम्मोहः सम्मोहात् स्मृतिविभ्रमः । स्मृतिभंशाद् बुद्धिनाशो बुद्धिनाशात् प्रणश्यति ॥2-63॥
怒りから妄想が起こり、妄想から記憶は彷徨い、記憶が失われ、考えが無能になり、考えが無能なら、その人は破壊されます[2-63]
しかし、この喪失は一生固定されたものではありません。
人間には知性[buddhi]があるため、いつでも方向転換して「識別のある人[vivekī]」になる可能性を秘めています。
それでもなお、多くの人がクリシュナの明快な教え[mata]に従わないのは、それぞれの人が持つ生まれ持った性質や傾向[svabhāva]に従い行動してしまっているからです。
